カワウン君と社労士A先生の労災講座 一人親方さんの活動場所
A先生)では、カワウン君に質問です。
当協会の事務局(事務所)は大阪にありますが、先日加入した一人親方さんは今どこで仕事をしているでしょうか?
カワウン君)えーっと、大阪で加入手続をしたので、大阪で仕事をしています。
A先生)ハズレです。その一人親方さんは、現在秋田の現場に行っています。
カワウン君)ええぇー!そんな遠い所に。早く大阪に戻ってこないと、ケガした時に大変ですよね?
A先生)それもハズレです。この一人親方さんが万が一現場でケガをしてしまったら、現場近く等の病院に行って治療を受けてもらうんだ。その後落ち着いたら、まずは当協会に連絡をしてもらうんだよ。
カワウン君)そう言えば香川の一人親方さんも・・。いえいえ、A先生、秋田にいる一人親方さんの秋田での労災の手続きを大阪で出来るんですか?
A先生)出来るんだよ。労災制度は国が行っているって言ったよね。労災制度は「ここのこの場所」だけで運営されているんではないんだね。なので、全国どこの現場の事故でも労災申請を行う事が出来るんだ。どの会社からの請負現場でも同じだよ。
もちろん私たちは大阪にいるわけで、団体の管轄が「大阪」だから、書類は大阪の労働基準監督署に提出して行くことになるね。
カワウン君)そうなんですか。書類の提出が出来ればもう一安心ですね。労災スタートですか?
A先生)うーん、それは少し微妙です。
カワウン君)えっ・・、なぜ・・?
A先生)確かに私たちは一人親方さんから連絡をもらって「労災申請書類」を作成するね。
そして、労働基準監督署へ提出していくんだけれど、事故内容や現在の状況など、いろいろ確認事項はあるんだね。必要があれば本人に確認することもあるし・・。それらを審査して、最終的に労災認定を行うのは労働基準監督署なんだよ。
カワウン君)そうなのですか・・。ぼくたちはあくまでも一人親方さんと労働基準監督署との間のお手伝いなんですね。ぼく、書類を出したら、もう、すぐに労災になるんだって思っていました。
A先生)そうだね。最終的な結果を本人さんが知るまでには、数か月はかかるかな。個々人の話だから、それぞれ違うんだよ。ケガだけならば、本人さんにはあんまりピンと来ないかも知れないかな。休業の時には収入補償の振込等があるから、数か月はやっぱり気になるね。
カワウン君)ケガをしても、労災ではないこともあるんですか?
A先生)うーん、そうだね。現場の事故ならばすべてが労災の対象となるわけではないんだな。
カワウン君) じゃあ、ケガをしても、自己負担になることもあり得るんですね・・。
A先生)可能性としてはあるかも知れないね。例えば「建設業定義の範囲外」の場合には労災が受けられないし・・。
カワウン君)「建設業定義の範囲外」・・?
A先生)最初の頃にも話したと思うけれど、「土木・建築その他の工作物の建設・改造・保存・現状回復・修理・変更・破壊もしくは解体またはその準備の事業」という定義があるんだよ。
建設業には大工・とび・左官・塗装等多くの職種があることは話したね。建設業の一人親方労災特別加入が可能な業務は、特に職種の限定はなくって、あくまで建設業の定義で判断されるんだ。
だけど、労災加入したとしても、その時の従事していた作業内容が大事なんだね。
カワウン君) なんだか、とっても難しそうに・・。
A先生)そうだね、ごめんごめん。分かりやすいイメージがモットーだったね。
作業時の注意が必要なのは、たとえば造園工事の一人親方さんが、造園工事作業・・・ではなくて、「植木の剪定のみ」「個人邸の植木剪定のみ」を請け負った場合や、メンテナンス中心に「ビル窓の清掃のみ」をしていた場合は、建設業の定義から外れて、労災補償の対象にならないんだよ。
カワウン君)えぇえーっ!知っていないと危ないですね・・。
A先生)そうだね、労災加入をしている一人親方さんでも、建設関係とは違う作業を請け負うことがある場合には、特に安全には注意が必要だね。不思議だけれど、造園工事は労災対象で植木剪定は対象外なんだよね・・。
カワウン君)一人親方の皆さんは、作業前に労災補償の対象になるかどうか迷ったりしないんでしょうか?
A先生)うーん。どの作業も気を付けないといけないという事は大前提なんだけれど、万が一「これは労災対象かな?」と迷ったら、当協会に連絡してもらえれば、こちらでも確認のサポートをしていくよ。
一人親方さんが加入時に、「その他の業務の欄」に作業する内容を詳しく記入してくれたら、「作業内容」の確認も行う事が出来るんだ。